
しかし今年6月7月、政府が取りまとめた「骨太の方針」(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)には、目を疑う記述が見られました。
「大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める」というのです。
上のリンク(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)の33ぺージ1行目を見てみてください。
「社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進」の中の、比較的目立たない一文に過ぎませんが、はっきりと「大麻に関する制度」の見直しと記されています。
直後に「大麻由来医薬品の利用」と記されていますが、さらにその後に「等」と、さっそく留保がついている。
医薬品以外の各種嗜好品にも可能性が開かれた「ザル規定」というべきものでしょう。
このような記述が盛り込まれた背景には「大麻議連」の「地道な活動」があったとされます。
「大麻議連」はさすがに聞こえが悪いですが、正式名称「カンナビジオールの活用を考える議員連盟」という超党派議連。
初代会長は自民党の河村建夫元衆院議員(80、二階派)。現在は山口俊一衆院議員(72、麻生派)が後継し、副会長は松原仁・立憲民主党衆院議員・元国家公安委員長(66)と、そこそこ以上の貫目の議員が代表を務め、骨太までたどり着いたらしい。
議連としては物質名カンナビジオールを略して「CBD議連」の呼称を用いたい意向のようです。
コロナ以前、アムステルダムから出稿した本連載にもグローバルに「成長」が見込まれる「大麻関連産業」について記したように、大麻関連解禁は、かなり巨額なビジネスを生み出す可能性があります。
政治家も動き、ついには「骨太方針」にまで記載されることになっている。驚かれた読者も少なくないと思います。
親推奨の大麻チョコで子供がチルな気分
こんな具合ですから、カンナビジオールを利用した新製品発売に勢いがつき、CBD商品は若者に人気を博しつつあり、東京渋谷にはCBDカフェも(https://www.youtube.com/watch?v=4SBGzDyA_Kw)登場しました。
「摂取するとChill=ゆったりとした気分になれる」と、関連事業が「急成長」しているらしいのですが・・・。
上のリンクで、特に「CBDチョコレート」を子供が食べている風景は、大麻解禁国オランダでの年令規制(18歳以下は厳禁)を考えるとき、かなり微妙と言わざるを得ません。
チルになったつもりが、注意散漫で気がチルだけになったりしないか、かなり心配です。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」は、あらゆる薬物に共通の基本ですから、営利に走ればとんでもないことが起きる懸念も、あらかじめ指摘しておく必要があるでしょう。
さらに、合法な「CBD」製品を輸入したはずだったはずなのに、その中に違法な大麻の幻覚成分THCが含まれているケースが(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/other/torishimari_00001.html)少なからず(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/other/torishimari_00002.html)見られ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/other/torishimari_00003.html)、また、そうした情報を織り込み済みの違法幻覚成分の含有を匂わせる「一見合法CBD製品」という商法まで出てくる始末。
これが軒並み、例によって「ABC LSD」な意味不明アルファベット頭文字の濫用で、報じているはずの側自体が薬物が何であるのか一切理解していない。
これではわけが分かるはずがありませんので、例によって大麻「禁止物質」と「合法物質」を巡る「常識の源流探訪」を考えてみたいと思います。
分子式は全く同じ、何が違う?
合法と非合法を分ける「構造」
ということで、まず読者の関心が一般に高い「非合法成分」幻覚症状等を引き起こすとされるTHC「テトラヒドロカンナビノール」の構造式から見てみましょう。
何だかいろいろごちゃごちゃしていますね。類似の物質が多数あり、その一つとして示しておきます。
重要なポイントは「C21H30O2」という分子式。これだけ覚えておいてください。
この分子は炭素Cと水素H、それに酸素Oだけでできているシンプルな分子で、生物が用いる大半の分子に含まれるチッ素Nが含まれていない。
分子量が小さくチッ素も含まれておらず、人間の体の様々な場所には、こうした小分子を取り込む「カンナビノイド」受容体があるため、体に取り込むといろいろな影響が発生してしまう。
「リラックス」とか「ハイになる」とか表現は多様ですが、基本「多幸症的な精神状態」つまりハッピーになってしまうようです。
これがクセになる場合がある。
習慣性、つまりクスリの中毒に陥る。ついついオーバードーズすると、やがて健康を害し、サイケデリックな幻覚を見たり、脳に異常が見られたりもしうる・・・。
ざっとこんな悪影響が出るとされ禁止薬物に指定されている。
さて、これに対して「合法物質」いまや議連まで作られているので「議連薬物」と書いておきましょうか。
都会に提供するカフェもできて若者に人気、子供に食べさせる若親も登場。政府の「骨太方針」にまで登場したCBDとは何なのか?
何だ、さっきのとほとんど同じではないか?
「そっくりさん」と思われるかもしれません。いやそれは当たっていて、こちらの分子式も確認してみると・・・C21H30O2、さっきの「禁止薬物」と完全に同じです。
分子式が同じなのに、片方は違法、片方は合法、何が違うかというと、その構造が違うのです。
どこが違うか分かりやすいよう構造式のポイントになる原子に色を付けておきました。
「禁止薬物」の方は、赤文字で記した「OH」、水酸基とかヒドロニウム基とか言いますが、これが一つしかない。
これに対して「議連薬物」の方は同じ「OH」が2つ付いている。「禁止薬物」のO=酸素は隣と仲良く手を繋いで「環」を作っていましたが、その枝についていたCH3のH一つがOと結託してOHとなり、残りが「CH2」になれば「議連薬物」が出来上がる。
こんなちょっとの違いで、なぜ禁止したり合法だったりするのでしょう?
物質の源流探訪
ベンゼン、フェノールから考える麻薬
女性は香水が好きな人が多いのでしょうか。昨今は男性化粧品も、ずいぶん香りのアピールが強いものが増えました。
香水の成分に多い「アロマ」の物質を「アロマティック・ハイドロカーボン」芳香族炭化水素「aromatic hydrocarbons」と呼んでいます。
最もシンプルな物質はベンゼン、亀の子のような形をしている。分子式C6H6、分子量約78、融点が摂氏約5度、沸点が約80度、常温で気化しますから匂いが立ちやすい。分かりやすい話です。
ベンゼンとフェノールの違い
いまこのベンゼンの周りについているH=水素を、一つだけOH=水酸基にとり替えてみましょう。
OHがくっついた鎖状の炭化水素はアルコールと呼ばれ、これが好きな人は多いようですが、一番簡単な構造を持つメタノールは猛毒で、それによる死亡、殺人容疑といった犯罪も報じられています(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220916/k10013820301000.html)。
つまり、ほんのちょっとの構造の違いでも命にかかわる劇物であったりする。化学物質は怖いものだとつくづく思います。
ベンゼンの亀の子にアルコール同様のOHというシッポがついたものをフェノールと呼びます。
このフェノール、ベンゼンとよく似ていますが、分子式C6H6O、分子量約94、融点が摂氏約40度、沸点が約181度。
常温では白色の結晶で、水にはわずかしか溶けませんが、アルコールやエーテルにはいくらでも溶ける。ベンゼンとは全く違う物性を示します。
さらに猛毒であることを記さねばなりません。腐食性があり、皮膚に付着するとびらんを起こします。
さて、さっきの「禁止薬物」テトラヒドロカンナビノールというやつも「ノール」という同じ語尾を持っていますね。
本質的にフェノールの仲間であって、それにいろいろ「カンナビス」つまり大麻の成分がくっついている。
ちなみに「テトラ」「ヒドラ」とは、大本になるフェノールに水素が4つついていることからの命名と思われるので、その水素を黄色に彩色しておきました。
これに対して「議連薬物」合法物質カンナビジオールの方は、先ほど示した構造式を一目見て分かっていただけるように「OH」が2つ付いている。
これは「フェノール」の親戚ですが、「1価」ではなく「2価」のフェノールということになります。
カンナビジオールという名前は。カンナビス由来の原料に2つの「オール」がついているから2を表す接頭辞「di-」をくっつけて「ジオール」というわけです。
最もシンプルな2価のフェノールですら、以下のように3つの構造が可能です。
このように同様の分子構造を持ちながら、官能基の位置が異なる「兄弟」同士を「位置異性体」と呼んでいます。
1価フェノールと2価フェノール「三兄弟」(位置異性体)
2つのOHが並んでる2価のフェノール三兄弟の長男は「カテコール」と呼ばれます。
分子式C6H6O2、分子量約110、融点が摂氏約110度で沸点が約245度、常温常圧では無色の結晶で、水に大変よく溶ける物性。
昨今お茶の葉の成分「カテキン」が広く知られるようになりましたが、その原型のような形をしています。
強い抗酸化作用があり有用な物質ですが、催奇性なども確認されており日本国内法では「劇物」の扱いになっている。
これに対して2価のフェノール三兄弟の次男は「レゾルシノール」と呼ばれます。
分子式同じくC6H6O2、分子量約110、融点約110度ですが沸点約280度、常温常圧では無色の結晶で、水に大変よく溶ける物性も同じ。
ほんのちょっとの違いですが、レゾルシノールは「長男」カテコールよりも働きがマイルドな還元剤なのです。
車のタイヤの接着剤や木工用ボンドの原料、さらには15%程度の水溶液でピーリング剤として医療にも応用がありニキビ治療にも用いられる。
非常によく似た構造を持つ物質が「美白化粧品」に用いられるなど、人間にも投与されている。
三兄弟とか三姉妹で、性格が良いのは真ん中という説がありますが、フェノール三兄弟では「次男」レゾルシノールの方が、特に人体に適用する有効性が高い。
さて、残りの三兄弟末っ子ですが「ヒドロキノン」と呼ばれます。
分子式C6H6O2、分子量約110は同じだけれど、融点約172度沸点約287度、常温常圧では無色の結晶ですが、水にもエーテルにも大変よく溶ける物性。
やはり兄たちと同様、強い還元性を持ちますが、長男ほど強烈ではないので、次男同様以前は「美白化粧品」などに幅広く使われていました。
しかし、フェノール同様の催奇性のほか、発がん性の指摘などがあり、最近は代替物質に席を譲る局面が増えています。
効能がソフトな「議連物質」
しかし単離には難点も
このように2価フェノール三兄弟の性質を見てきました。
「議連薬物」カンナビジオールは、構造を見ていただければ分かるように、比較的性質のおとなしい「次男」レゾルシノールの仲間なのですね。
神経伝達物質とよく似た構造を持つこれらの分子の中で、CBDが比較的作用が穏やかであるのは、本質的にレゾルシノールの性質を持つことで、側面から理解できる面があるでしょう。つまり反応性が激烈ではない。
メタノールやフェノール、カテコールのように強烈に働くことがなく、穏やかな作用でヒトの精神に影響を与える。鎮痛剤として用いられることもある。幻覚などは見ない。
しかし、分子式が同一で分子量も同じTHCを分離して、完全に検出限界よりも低く精製するのは、技術も必要ならコストもかかり、結果的に「麻薬成分残留製品」が出回りやすい。
とはいえ、このマイルドな「次男坊」議連物質、「痛みをブロックする」のと同様の薬理効果から「記憶を失わせる」効果もあり、PTSDなど、心にトラウマを抱える人の治療に役立つ面が期待されていたりもする・・・。
このあたりが「議連」のできる一因にもなっているようです。
でも「記憶を失う効果」がある物質は、濫用すれば頭がボケます。学齢にある子供に与えるなど、かなり慎重に考える必要があると思う一因でもあります。
ところが、そのような「脳に影響を与える物質」として、アルツハイマー症の進行を食い止める働きも期待されており、ここにもまた「議連」ができたりする背景がある。
要するに医薬品として使えば有効だし、それ以外の目的用途に濫用すれば、かなりの確率で破滅的な影響も覚悟した方がよい、そういう物質だということが分かります。
かつて江戸時代、大麻は「木こりの安らぎ」などと呼ばれて喫されていたそうですから、分かっている人が分別をもって用いる分には安全かもしれません。
しかし、たばこや酒のように一大税収源ともなっている「習慣性のある嗜好品」が社会にどのような影響を与えているかについては、日本の未来に関わることです。
70代、80代の高齢者任せではなく、また人気に飛びつく若者の浅慮に任せるのでもなく、落ち着いた思慮分別が必要不可欠でしょう。国立大学教官の観点から倫理的に指摘しておく必要もあると思います。
今年4月27日、自民党は「産業や伝統文化等への麻の活用に関する勉強会」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2022042701233&g=pol)を立ち上げ、殺害された安倍晋三元首相がそこに出席するといった報道があったのち、6月7日の「骨太方針」が出た格好になっていますが、記載は曖昧でかなり脇が甘い。
第一に言えることは、幻覚、もとい、厳格な「年齢制限」ならびに「適用」を明確に限定する必要性でしょう。
少なくとも子供が野放図に「うめ~」などと食べるような脱法状態は、早急に解消が望ましいこと、成長期の小児が生涯にわたる影響を被るリスクを念頭に倫理的な観点から指摘せざるを得ません。
「医薬品以外」の「等」の部分については、一度本格的に落ち着いて、よくよく検討し直す必要があるでしょう。
[もっと知りたい!続けてお読みください →] 飲料缶を凍らせて坂を転がすと、速度は上がるか下がるか [関連記事]安倍元首相の「国葬儀」は2匹目の「ケネディ神話」を目指せるか?

<このニュースへのネットの反応>
自分らの老い先短いからって余計なもん残そうとしてんじゃねぇよ
先進諸国が大麻合法化してる動きを見せてる中、日本に旅行行くと逮捕される、日本に気軽に行けない等の理由で、外圧がかかってると思う。昔から外圧に屈しやすい日本政治は、この件でも屈する可能性は高い。医療用大麻ならOKとか、某女優だった高木○○みたいな事を了承しそうな流れだ。頼れるまともな政党が無い国になりつつあるのが今の日本だろう。結局、自分を守れるのは己だけだ。
アヘン戦争そのもの。アメリカでブツがクッソダブついてるから、国外で捌きたいだけ
【JBpress】の過去記事 → >保守層の愛国心を煽る“ネトウヨ”は日本人なのか右翼やネオナチの看板を新たな工作活動に利用する者がいる可能性 >メディア崩壊:ネトウヨに支配され始めた米国事実確認など無用、噂を“事実”として流し続ける保守系メディア 『団地と移民』(安田浩一著、角川書店)の一部を抜粋
■「正高佑志」はカンナビノイド学会とグリーンゾーンの理事。立憲民主の「亀石倫子」と活動。他の理事「三木直子」は、EALDs幹部の9割を輩出した「国際基督教大学」であり、同じく基督教大を出た9条弁護士「丸井英弘」と大麻講演会。こいつらの主催するマリファナマーチには、しばき隊設立者「野間易通」が参加。「大麻/在日/LGBT」は全て同じ在日チョン活動家がやってる
日本古来の大麻は薬効成分少なめの繊維用。麻薬成分を利用するなら有効成分のみ抽出して薬にすれば良いし、そもそも化学合成でより良い物が作れるので大麻にこだわる必要が無い
★ 日本人による大麻使用は反対。日本人にむざむざ利益を与える必要はない。それに神道の神聖な植物と聞いた、断種すべき。(#^ω^)
貧困とヤクは最悪の組み合わせ
THCとCBDを意図的に混同させようとしている悪質な記事
THCだろうがCBDだろうが、明確な危険性って客観的な研究では明らかになってない。 アメリカの大麻取締法の経緯は、大麻吸ってるメキシコ人を迫害するために作られた法律。なんら根拠は存在しない。 別に解禁しても良いと思うけどな。
>「アメリカの大麻取締法の経緯は、大麻吸ってるメキシコ人を迫害するために作られた法律」 って客観的に明らかになってるんですかね?
”大麻由来医薬品の利用等”どう読んでも嗜好品に可能性なんぞある様に読めんのじゃが…儂の読解力が耄碌したんかのう
医療用なら大麻ごときを気にする理由がわからん。 ケシとか麻黄由来の薬ふつーに使ってるだろ
人の行動原理の根幹は「金(カネ)」だからな。人が激しく積極的に動く場所には激しく唸る金が動いてる。金になるから大麻議連は活動してるんだよ。桜を見る会なんぞ目じゃない真っ黒い意図を感じないか?
日本で使用禁止の上、合法の国に売りつけてやれ
この記事は大麻にラリりながら書いたのか?
医薬品の利用を推進することで、神社で使う用の大麻栽培も維持できて助かるって側面もあるだろ、たぶん。
一般人に訴えたいならもっと真面目に記事を書きたまえ
橘ギャレン >明らかになってるよw。 戦前にアメリカでメキシコ移民の素行と見た目が悪いってんでそれを大麻と結び付けたんだよ。んで戦後日本にもその法律が適用された。さらに日本にいる米兵に大麻を使わせないためってのも追加された。
ラガーディア委員会報告書ってあるから。・・・要約すると、「 アメリカが1937年に大麻の使用を実質的に禁止にした大麻課税法が制定された翌年に行われた。 そんな時にニューヨーク市長が公的な調査をした結果、大麻の安全性を立証してしまった。」わけよ。